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ウェストパック銀行とは
ウエストパック(又はウェストパック)銀行は、オーストラリア4大銀行の一角として知られています。オーストラリアの銀行では、貸出総額ベースで2番目のシェア(22.2%)です。隣国のニュージーランドでも、4大銀行に数えられます。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)のADR銘柄として、楽天証券、SBI証券、マネックス証券などで取引可能です。
オーストラリア株なので、配当の現地課税がゼロであり、二重課税は発生しません。
本拠地 | 豪州・シドニー |
創業 | 1817年 |
セクター | 金融 |
ティッカー | WBK |
2016年から低迷しているオーストラリアの銀行株
ウエストパック銀行をはじめとした豪州銀行株は、2016年以降、株価が低迷しています。その理由は一連のスキャンダルによるものです。
- 2016年3月。オーストラリア証券投資委員会(ASIC)が、同国の指標金利を不正に操作したとして、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)を提訴。
- 2016年6月までに、ウエストパック銀行 (WBC)、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)も、順次提訴される。
- 2017年7月から銀行税が施行。大手銀行に対する新たな課税が開始。
- 2018年1月末、ASICが指標金利の不正操作の疑いで、コモン ウェルス銀行(CBA)を提訴。
- 2019年2月4日、オーストラリア王立委員会が、一連の金利不正操作に関して、最終報告を提出。予想より厳しくなく、市場には安堵感が出始める。
オーストラリア王立委員会の最終報告の概要は、こちらをご参照ください。
参考 オーストラリアレポート。王立委員会は豪金融業界の不正調査の最終報告を公表ニッセイウエストパック銀行の経常利益の推移
数値のソースは同社のアニュアル・レポートです。
経常利益は、6年ぶりの低水準になっています。その理由についてアニュアル・レポートでは、指標金利関連の訴訟や改善にかかったコスト、歴史的に低水準となった金利などが挙げられています。
ウエストパック銀行の財務
有利子負債の推移
利益剰余金の推移
有利子負債の大きさは、気がかりな水準で推移。増資や減配が懸念されていました。投資判断が難しいところでしたが、先日の通期決算でバランスシートの強化を目指すとして、増資が発表されました。
クレジット・リスク
金融機関である以上、クレジット・リスクには警戒が必要です。ウエストパック銀行の貸出総額の内、72%が一般消費者向けとなっていて、その内92%が不動産ローンです。(貸出総額に占める、不動産ローンは約66%)中長期的にオーストラリアの住宅市場が堅調であれば問題ないでしょう。
ウエストパック銀行の増資計画
参考 豪ウエストパック銀、25億豪ドル規模増資と減配発表-9月通期は減益ブルームバーグ約25億豪ドル(約1,870億円)の増資計画と減配が発表されました。ある程度は織り込み済みだったためか、株価の変動は軽微でした。
ウエストパック銀行のフリーキャッシュフロー
2015年はマイナスですが、2016年、2017年は堅調でした。やや不安定ですね。
2018年にはフリーCFが悪化しています。フリーCFの減少要因は、一連の金利操作に関連して、不当なサービスに対する補償金を顧客に支払ったためです。指標金利操作問題が、配当原資を毀損する結果になってしまいました。
また、フィンテック関連投資で2,400万豪州ドルを計上するなど、将来に向けた投資も行なっています。
ウエストパック銀行とオーストラリア経済の評価
オーストラリア経済の見通し
オーストラリアという国の見通しは極めて良好です。人口減少社会の日本と違い、オーストラリアは長期的な人口増が見込まれています。オーストトラリアの人口は、2100年には2015年比で75.8%の増加予想。日本は33.9%の減少予想。
政府債務残高を見ると、日本は内国債中心とはいえ増加傾向ですが、オーストラリアの政府債務残高は減少傾向です。現時点でもオーストラリア国債は、格付けが世界で最も高い国債(ムーディーズ最高格付けAaa、S&P最高格付けAAA)ですが、今後さらに信用力が高くなりそうですね。
GDPの増加傾向も、長期的に継続すると思われます。
つまり、オーストラリア経済の長期的な見通しは非常に良いのです。これから成長していく国です。
オーストラリア経済への投資
そのオーストラリアに投資をする場合、選択肢が限られています。低コストなインデックス・ファンドは存在していないし、購入可能な個別銘柄も限られています。例えば楽天証券で購入する場合、BHPグループ(BHPビリトン)とウエストパック銀行しか現時点ではありません。
では、ウエストパック銀行は買いでしょうか?
一連の問題については、オーストラリア王立委員会の最終報告を見る限り、最悪な時期を脱したかに見えます。また、減配後も配当利回りは6.5%程度あります。株価も過去5年間で最安値圏です。逆張りを考えても良さそうな状況ではありますね。
ウエストパック銀行は、Dow Jones Sustainability Indexの評価では、オーストラリアで最も持続可能性が高い金融機関です。(世界の金融機関で9位)
ちなみに、過去にこの銘柄について20ドル以上で買い煽る人が多かったのですが、私は18ドル台以下で買うようにしています。20ドル以上でもバリュエーション的に割安だとする記事を多く見かけますが、個人的には現状の財務を見る限り、20ドル以上で割安とは思いません。
ウエストパック銀行が売買停止に
11月26日のウエストパック銀行の取引が売買停止になりました。理由は、小児性愛者のマネーロンダリングが、同行で行われていたため。オーストラリアの閣僚が相次いで批判し、同行の経営陣には退陣要求がでています。
株価の下落も考えられるため、しばらく静観した方が良い局面です。