資産形成のために、海外の高配当株を長期保有し再投資することは、有効な手法の一つです。しかし、高配当だからと言って、割高なものを購入するのは避けたいところ。
この記事では、「割高なものを避けつつ、高い配当利回りを確保する」という観点から、銘柄選択について記述します。
割高になった米国個別株
アメリカの優良な高配当銘柄の配当利回りを見てみます。データは全て2019年9月7日時点。
銘柄 | ティッカー | 配当利回り | PER | 事業内容 |
P&G | PG | 2.43% | 28.44 | 家庭用品 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | JNJ | 2.96% | 17.53 | 家庭用品・製薬 |
コカ・コーラ | KO | 2.90% | 25.61 | 飲料 |
ペプシコ | PEP | 2.78% | 25.19 | 飲料 |
ハーシー | HSY | 1.94% | 27.78 | 加工食品 |
ゼネラル・ミルズ | GIS | 3.57% | 17.03 | 加工食品 |
ファイザー | PFE | 3.95% | 20.47 | 製薬 |
エクソン・モービル | XOM | 4.91% | 16.73 | 石油 |
AT&T | T | 5.63% | 13.76 | 通信キャリア |
アルトリア | MO | 7.66% | 10.86 | タバコ |
いずれもシーゲル流投資にはお馴染みの、代表的な高配当銘柄です。
一覧にすれば明白ですが、63年連続増配のP&Gをはじめとして、ペプシコ、ハーシー(ハーシーズ)など、事業の見通しが良好な銘柄は、PERが高いために配当利回りが低くなっています。配当利回りは、税引き後で最低3%は欲しいところですが、今は税引き前でも2%台です。
現在は優良な高配当銘柄のバリュエーションが高い状況。
一方で、加工食品、石油、タバコなど、今後の見通しに不安がある事業は、市場で評価されていません。そのため、ゼネラル・ミルズ、エクソン・モービル、アルトリアはPERが低く、配当利回りが高い。市場は高配当の持続性を疑問視しているのでしょう。
高配当ETFの利回り
次に高配当ETFの指標を見てみます。
銘柄 | ティッカー | 配当利回り | 信託報酬 | 純資産額 |
バンガード・米国高配当株式ETF | VYM | 2.90% | 0.06% | 240.8億ドル |
iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF | HDV | 3.24% | 0.08% | 72.0億ドル |
SPDR ポートフォリオ S&P500 高配当株式 ETF | SPYD | 5.13% | 0.07% | 17.4億ドル |
個別株の配当利回りが低下している中、高配当ETFの利回りは最も低いVYMでも3%前後で推移。P&Gより高く、コーラと同程度ですね。
個別株と違い、ETFは倒産のリスクを考える必要がありません。純資産額もこれだけ巨額であれば、繰り上げ償還のリスクがない。信託報酬も非常に低い。
アメリカ株にはこのように、信託報酬が低く純資産額が大きい、優れた高配当ETFがあります。個別株が割高な間は、高配当ETFを買うことも良い選択肢になります。高配当ETFであれば、低リスク・低コストで高配当株を保有できます。
高配当ADR銘柄の利回り
ニューヨーク市場で購入可能な、主なADR高配当銘柄を見てみます。以下のうち、ウエストパック銀行のみオーストラリアの銘柄。それ以外は全てイギリスの銘柄です。
銘柄 | ティッカー | 配当利回り | PER | 事業内容 |
ユニリーバ | UL | 2.87% | 16.26 | 家庭用品 |
ディアジオ | DEO | 2.50% | 26.53 | 飲料 |
グラクソ・スミスクライン | GSK | 4.41% | 19.10 | 製薬 |
ナショナル・グリッド | NG | 5.63% | 19.05 | 送電・ガス供給 |
HSBCホールディングス | HSBC | 6.91% | 10.86 | 金融 |
ウエストパック銀行 | WBK | 6.64% | 13.88 | 金融 |
ロイヤル・ダッチ・シェル | RDSB | 6.74% | 11.15 | 石油 |
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ | BTI | 7.50% | 10.88 | タバコ |
ディアジオはPERが高い状況が長く続いています。それ以外はPERが10倍台。
P&Gとユニリーバ、エクソン・モービルとロイヤル・ダッチ・シェルなど、同業種で比較しても、アメリカ株に比べると、イギリス株はバリュエーションが低い傾向。
確かにイギリスにはブレグジット問題など不安視される要素もありますが、配当課税がゼロという、非常に大きいメリットがあります。(ウエストパック銀行のオーストラリアも同様)
ポートフォリオ
P&Gやペプシコなど、アメリカの個別株のバリュエーションが高い間は、アメリカ株は高配当ETFで購入し、個別株はADRのイギリス株やオーストラリア株を購入するのが、得策と言えます。
なぜ個別株が必要かと言うと、高配当ETFのみでは高い配当利回りを望めないからです。リートを含むSPYDは別として、VYMやHDVでは良くても税引き後3%が限界でしょう。
イギリスの高配当銘柄は、配当利回りの高さと、現地配当課税がゼロというメリットから、米国高配当ETFの利回りの補完に適しています。
例えば、以下のようなポートフォリオが考えられます。
高配当ETFやイギリスの個別株の選択は、人によって意見が分かれるところです。例えばHSBCのような金融銘柄を持ちたくない、という人も多いと思います。銘柄選択は一つの例です。
まとめ
- 現在、アメリカの優良銘柄は割高な状況。
- アメリカ株には、優れた高配当ETFが複数あるため、良い選択肢になる。
- ADRの高配当銘柄は、配当利回りを補完するのに適している。