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三菱ケミカルHDの田辺三菱製薬TOBの概要と株主視点の感想

三菱ケミカルHDが田辺三菱製薬のTOBを発表

11月18日、三菱ケミカルHDは56.39%の株式を保有している、田辺三菱製薬株式会社をTOB(株式公開買い付け)によって完全子会社化すると発表しました。

買い付け価格(一株2,010円)は、田辺三菱製薬の18日の終わり値(1,338円)より50.22%高い価格でした。そのため、田辺三菱製薬の株価は19日にはストップ高、20日も前日比22.4%プラスと、大幅に上昇しています。現在はTOB価格付近で推移していますね。

田辺三菱製薬の株価推移 source yahoo finance

三菱ケミカルHDの株価は下落

一方で、三菱ケミカルの株価は下落しています。50%のプレミアムを乗せたTOBを、嫌気したものと見られます。

三菱ケミカルHDの株価推移。source yahoo finance

三菱ケミカルHDのフリーキャッシュフローの推移

三菱ケミカルは2018年のフリーキャッシュフローが、大幅なマイナスになっていました。産業ガス事業への投資(アメリカのプラクスエアから産業ガスの欧州事業を50億ユーロ(約6,400億円)で買収)が主な要因です。続く2019年にも、買付総額4,918億円の大型買収となれば、配当原資を毀損する懸念が生じるのも、当然でしょう。

田辺三菱製薬に対するTOB価格の算定根拠

DCF法

TOB価格はDCF法で求められました。DCFはDiscounted Cash Flowの略ですが、将来得られるであろうキャッシュフローの、割引現在価値で理論株価を算定するものです。

古典的な株式評価法の配当割引モデル(Dividend Discount Model(DDM))が、将来得る配当の現在価値の合計値で、理論株価を算定することと、考え方は近いですね。

DCF法に基づいて、各機関が算定した理論株価は以下のとおりです。

機関 下限 上限
J.P.モルガン 1,799円 2,289円
KPMG 1,841円 2,096円
メリルリンチ日本証券 1,861円 2,209円

フリーキャッシュフロー予測

これはメリルリンチ日本証券がDCF分析の前提とした、田辺三菱製薬のフリーCF予測です。

2023年度(2024年3月期)のフリーCFが前年度比で64%増となり、以後大きく伸びていますが、以下の理由によるとのことです。

対象者後期開発品向け研究開発投資の一巡、及び、ND0612(パーキンソン病治療薬レボド パ/カルビドパ持続皮下注製剤)や MT-1186(筋委縮性側索硬化症治療薬エダラボン経口懸濁剤)をはじめとする現在の対象者後期開発品の本格的な利益への貢献が見込まれるため。

田辺三菱製薬とは?

本拠地 創業 業種 市場
大阪市 1678年 医薬品 東証一部

1678年創業は非常に古いですね。現在では製薬メーカーとして、大手となっています。

製薬メーカー売上高ランキング(2018)

順位 前年度 メーカー名 売上高
1位 1位 武田薬品工業 2兆972億
2位 2位 アマテラス製薬 1兆3,063億
3位 3位 大塚HD 1兆2,919億
4位 4位 第一三共 9,297億
5位 5位 エーザイ 6,428億
6位 6位 中外製薬 5,797億
7位 7位 大日本住友製薬 4,592億
8位 8位 田辺三菱製薬 4,247億
9位 10位 塩野義製薬 3,637億
10位 9位 協和発酵キリン 3,465億

田辺三菱製薬の事業構成(セグメント・シェア)

田辺三菱製薬・完全子会社化の意義

三菱ケミカルHDの3事業(機能商品・素材・ヘルスケア)の内、ヘルスケア事業を強化することになります。

米国株の歴史を参考にすると、11セクターの内、過去最もリターンが高かったセクターはヘルスケアであり、最もリターンが低かったセクターは素材です。現在でもヘルスケアの利回りは安定的であり、ヘルスケア事業を強化する方針自体は悪くないでしょう。

今後の田辺三菱製薬の見通し

ラジカヴァ/MT-1186 ND0612 MT-2271
売上予想 700~1,000億円 500~800億円 400~600億円
適応症状 筋萎縮性側索硬化症 パーキンソン病 季節性インフルエンザ
上市時期 2021年度 2022年度 2021年度

これらの医薬品が新たに売上を牽引すのであれば、見通しが少し明るいものになりますね。

Muse細胞と田辺三菱製薬の関連は?

ミューズ細胞は再生医療で使用される幹細胞の一種です。他の幹細胞に比べて、腫瘍になりにくく、短時間で再生が可能という、優れた特徴を持っています。ヒトとの相性も良いようです。

現在は、三菱ケミカルHD傘下の生命科学インスティテュートが、急性心筋梗塞および脳梗塞の臨床試験を行なっています。ミューズ細胞は広く応用がきくため、適応疾患は拡大中です。2020年度の申請、2021年度の承認、それ以降の販売を計画。

医薬品化が実現する場合に、田辺三菱製薬の製薬技術や販路は大きく寄与する可能性があります。

田辺三菱製薬TOBに対する評価

今回のTOBによって、負債資本倍率(DEレシオ)は悪化します。三菱ケミカルHDは3年以内に、改善することを目指すとしますが、当面の財務の悪化が気がかりですね。

買付価格が高すぎるのではないか、という不満を持つ株主も多いでしょう。三菱ケミカル株主が損をして、田辺三菱製薬株主に儲けさせているようにも見えますからね。DCF法の根拠なっている、田辺三菱製薬の将来のフリーCF予測が妥当なものか、楽観的な見込みに過ぎないのかも、現時点では判断できません。

個人的には買い目線

色々懸念事項は多いですが、ヘルスケアへの投資という方向性は良いと思いますね。高値にはなりましたが、キャッシュフローに優れる業種への投資であったことは救いです。

逆張り気味にはなりますが、株価が買値より下回ることがあれば、追加投資も考えています。もちろん、減配をするようなら考えは変わりますが。

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