Long-term investment

ウォーレン・バフェットと孫正義の投資哲学の違いについて

孫正義が目指すバークシャー・モデル

孫さんは2016年の決算説明会で、次のように話していました。

テクノロジー業界のバークシャー・ハサウエイを目指している」

「彼ら(バークシャー)は保険というキャッシュフローを生み出す事業を片方で持ちながら、投資を行っている」

バフェットのバークシャー・ハサウェイが、傘下のGEICO(ガイコ)やジェネラル再保険の、フロート(保険金の支払い準備資金以外のお金)を投資に回してきたモデルを、参考にするということですね。

傘下企業から得たキャッシュフロー(ソフトバンクの場合は通信事業)を、投資に活用するビジネスモデルは似ています。

しかし、バフェットと孫正義さん個人の投資哲学には、大きな違いがあるようです。私が考える両者の違いをまとめます。

投資法における時間の概念の違い

ウォーレン・バフェットの時間軸

80年代、バフェットは既に大企業だったコカ・コーラに投資して、以後、バイ・アンド・ホールドしています。

バフェットがコカ・コーラを選んだのは、確立されたブランドに優位性を見出したからです。バフェットは長期投資とは、その企業と結婚するようなものだと言います。保有期間は半永久的です。

バフェットの複利効果

長期的な投資先(結婚相手)を見つけるためには、まともな企業を素晴らしい安値で買おうとするよりも、素晴らしい企業をまともな価格で買うほうがいい」(バフェットからの手紙)

素晴らしい企業を、長期的にバイ・アンド・ホールドして、複利運用してきたわけです。

複利運用とは、元本から生じる利子を再投資して、元本を増やし、更に配当を増やす運用方法です。株式の場合は利子は配当になります。時間はかかりますが、複利効果の力は凄まじいものです。

例として、追加投資一切なしで、現実的な6%複利で試算すると、次のような推移になります。30年間で5.74倍です。バークシャーの場合は、より高い利回りで運用してきました。

6%複利・30年間のシミュレーション。

アインシュタインが複利効果について、「複利効果は人類最大の発見だ」、「複利効果は宇宙に存在する力で最も強力だ」と言ったと、多くの人が引用しています。ソースは定かではなありません。アインシュタインの生存中には、複利運用について経済学者が論証していなかったため、本当に言ったかは疑わしいものです。

しかし、このような都市伝説が事実のように語られるぐらい、複利効果が強力であることは間違いないことです。

孫さんの時間軸

これに対して孫さんの場合、長期的な複利効果を意識しているとは思えません。

孫さんの場合は、90年代後半におけるインターネットや、現在のAIのように、今後新たなプラットフォームを構築すると思われる分野に、大規模に先行投資をするのが特徴になります。

この場合、現在の業績は二の次で、その企業が新たなプラットフォームを構築し得るかが、最大のポイントになります。

投資先と投資タイミング

これまでの投資先を見ると、営業利益500億のARM社に3兆3千億を投じたのは、利益の66年分の投資額です。それ以後の、Uber、DiDi、WeWorkなど、投資先企業のほとんどは、未上場の赤字企業です。

小型成長株投資で史上最大の成果をあげたピーター・リンチは「小型株に投資をする場合、黒字になるまで待つべきだ」と書いています。孫さんの場合は、そこまで待ちません。赤字・未公開株の段階から投資しています。

孫さんは未来を見据えて、他者よりも早く動きます。そのためには高いリスクも背負うわけです。

投資成果の再現性

バフェットのように、ワイドモート(他社に対する優越性を持つ企業)を長期保有する投資法は、再現性が高いと言えます。例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンを長期保有すれば、誰でも良い結果を得られる可能性が高いでしょう。

一方で、孫さんのようにプライベート・エクイティ(未公開株)に赤字の段階から投資をする場合、当たり外れが大きく、一度大成功を収めても、次は失敗してしまう可能性があります。再現性が高い投資法とは言えません。

孫正義の狙い

孫さんの狙いは明確です。次のGAFAに先行投資することです。GAFAが10年程度で世界最大級の時価総額に成長したことを見れば、短期で大きな成果をあげる手法としては、理に適っています。

アマゾン株の苦い失敗

孫さんは以前、アマゾン株の3割を買い取る機会があったといいます。1億ドルを提示したが、アマゾンのCEOであるベゾス氏は1億3千万ドルを主張。結局、買い取れなかったことを、今でも後悔していると語っています。(現在のアマゾンの時価総額は8,880億ドル以上)

アマゾンの時の失敗を二度と繰り返さない、という考えが、今のビジョンファンドの投資に繋がっているのでしょう。

参考 孫正義氏「逃したアマゾン。あのとき資金があれば…」日経ビジネス

バークシャーとSBGのキャッシュフローの比較

ソフトバンク・グループのキャッシュフロー

ソフトバンクグループの決算を見ていると、営業利益が異常なほど上昇しているのが分かります。2019年3月期決算では2兆3539億円の営業利益を計上、2020年第1四半期には、6,888 億円の営業利益を計上。一方でフリーキャッシュフローは1兆9,151億円のマイナスでした。

単位:百万円 営業CF 投資CF フリーCF
2013年 860,245 △2,718,188 △1,857,943
2014年 1,155,174 △1,667,271 △512,097
2015年 940,186 △1,651,682 △711,496
2016年 1,500,728 △4,213,597 △2,712,869
2017年 1,088,623 △4,484,822 △3,396,199
2018年 1,171,864 △2,908,016 △1,736,152

このように、ソフトバンク・グループの連結フリー・キャッシュフローは、マイナスが続いています。営業利益とキャッシュフローの大きな乖離の理由は、次のとおりです。

  • 営業利益に占める株式の含み益が大きくなっている。
  • 投資額が巨額になっている。
  • 良好なキャッシュフローを生む事業が通信しかない。

バークシャー・ハサウェイのキャッシュフロー

バークシャー・ハサウェイはこの点でも、ソフトバンク・グループと対照的です。「永久に保有できる事業のみに投資をする」というバフェットの理念のもと、事業収益を生む会社を買収してきました。

バークスシャー・ハサウェイのキャッシュフローの推移です。

単位:百万ドル 営業CF 投資CF フリーCF
2015年 31,491 △28,001 3,490
2016年 32,647 △84,225 △51,578
2017年 45,728 △41,009 4,719
2018年 37,400 △32,849 4,551

主な買収先企業は以下のとおりです。規制に守られた電力会社や、アメリカ最大の鉄道網を持つBNSF鉄道など、安定的な事業収益を生む成熟した企業を買収していることが分かります。

社名 事業内容 買収額 買収日
プレジション・キャストパーツ 合成金属メーカー(金属加工) 370億ドル 2016年1月29日
BNSF鉄道 鉄道 340億ドル 2010年2月12日
ジェネラル再保険 多国籍の損害保険・生命保険 220億ドル 1995年12月21日
ルーブリゾール 潤滑油添加剤(主に自動車向け) 97億ドル 2011年9月16日
PacifiCorp 電力会社 94億ドル 2005年1月1日
NV Energy 電力会社 56億ドル 2013年12月19日
Marmon Group 電化製品等の持株会社 45億ドル 2008年1月1日
GEICO 自動車保険会社 23億ドル 1996年8月26日

まとめ

長期的な複利効果や、安定的な事業収益(キャッシュフロー)を重視するバフェットと、今後プラットフォームを握る可能性がある企業に、リスクを承知で先行投資する孫さんは、対照的に見えます。

どちらが良いと感じるかは、人それぞれ。バフェットが正しいとか、孫さんが正しいなどと、決めることはできません。

2 COMMENTS

アバター 匿名

itakenさんこんちゃー
たしかにバフェットさんと孫さんの投資法は違いますね
バフェットさんはキャッシュフローを使って、キャッシュを生む企業に投資していく
だから回っていく

孫さんは評価益だけなので、回っていかない
まあそれを担保に借り入れを膨らませるんでしょうけど、融資を断られるとフローが絶たれてしまう
景気後退で評価額が下がると更に窮地に陥る
舵取りは厳しいですね

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itaken itaken

こんばんは〜
バフェットは長い時間をかけて、キャッシュフローを生む事業に投資してきましたからね。市況の変動にも強い業種が多いし、盤石に見えます。
孫さんについても、その通りだと思いますね。融資が断られた分をどうするのかには、注目してます。担保提供比率も、次の発表で上がるでしょうね。ずっとこのやり方では厳しい気がしますよ。

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