Long-term investment

ユニコーン市場に暴落の兆し。ソフトバンクへの逆風。

この記事では、次の内容をまとめています。

  1. 9月26日にIPOしたユニコーン企業ペロトン(Peloton)の株価等の状況。
  2. ユニコーン市場の暴落という、ソフトンバンクグループが主導するビジョンファンドが直面する状況。

日本ではあまり触れられていませんが、アメリカではペロトンの暴落は大きな話題になっており、ウィーワークのIPO延期はペロトンの暴落とセットで語られます。

Peloton株の暴落

ペロトン(Peloton)という企業があります。エクササイズバイクを販売する会社ですが、非常に有望なユニコーン企業とされていました。

市場価値は昨年8月時点で42億ドル。この時点で割高であった可能性もありますが、ナスダックへのIPO時点では更に膨れ上がります。同社が設定した公開価格の29ドルに基づくと、IPO時点の市場価値は72億ドルです。一年で71%も評価額が高騰したことになります。

ペロトンの収益及び純損失の推移は以下のとおりです。

2017 〜2018年 2018 〜2019年 増加率
収益(売上総利益) 4億3,500万ドル 9億1,500万ドル 110%
純損失 4,700万ドル 1億9,500万ドル 314%

収益が拡大していますが、その以上のペースで純損失が膨らんでいることが分かります。事業が拡大するほどに赤字が増えるのは、ウーバーやウィーワークなど、他のユニコーン企業にも見られる特徴です。

ペロトン株はIPO当日に公開価格から11.7%も下げました。同社の暴落は、ウィーワークのIPO延期の決定に影響を与えたとされます。

Peloton(PTON)の株価推移。公開価格は29ドル。source yahoo finance

ペロトンのビジネスモデル

一言で言えば、ペロトンはエクササイズバイクを売る会社です。ペロトンが販売するバイクにはディスプレイが付いていて、フィットネス教室のコンテンツがストリーミング配信されます。

このため、ただのエクササイズバイクを売る企業が、テック企業と見なされてきました。不動産業なのにテック企業とされたウィーワークと似た構図です。

ペロトン社のフィットネスバイク

共働きで忙しい現代人は、ジムに通うのもの大変ですから、一定の需要はありそうです。自宅でトレーニングしながら、フィットネス教室のコンテンツが配信されるのであれば、ジムに通う必要もなくなりますからね。

従来のインフラ(ジム)を配信に置き換えたため、フィットネス界のネットフリックスと呼ぶ人もいました。

新しいプラットフォームの構築

ウーバー、ウィーワーク、ペロトンの事業内容は確かに新しさがあります。共通しているのは新しいプラットフォームを構築したという評価です。

しかし、新しいプラットフォームを構築し大成功したグーグル、アマゾン、ネットフリックスとは、明確に異なる点がいくつかあります。

  1. 事業の参入障壁
  2. 赤字額と営業キャッシュフローの推移
  3. ネットワーク効果

ここではネットワーク効果について取り上げます。

ネットワーク効果(ネットワーク外部性)

ネットワーク効果とは、利用者が多くなるほどその価値が高まることです。ネットワーク効果が働く市場では、利用者数が一定水準(閾値)を超えると、シェアが爆発的に増大します。

グーグルを例にとると分かりやすいです。グーグルは2008年に世界シェアで70%を超えると、その後も伸び続け、現在の世界シェアは92.86%に上ります。他社を全く寄せ付けません。

グーグルの検索エンジンの場合、明らかに利用者の多さ自体が、その価値を高めていることが分かります。グーグル以外の検索エンジンで、検索順位の上昇を狙う人は、おそらくもういませんよね。利用者が多いグーグルで検索上位になってこそ価値があります。高いシェアを握ったグーグルに、利用者が集約されました。ネットワーク効果の好例です。

では、ペロトン・ウーバー・ウィーワークなどの事業に、ネットワーク効果が働くのでしょうか?働きませんよね。利用者からすればディスプレイがついたエクササイズバイクを利用できれば良いので、ペロトンでなくてはならない理由はないのです。

ウーバーのライドシェア事業や、ウィーワークのシェアオフィス事業にも同じ事が言えます。

投資家の意識の変化

CNBC等のアメリカの報道を見ていると、投資家の意識が「ストーリーを買う」ことから、「ファンダメンタルを重視して買う」方向に、シフトしていると、よく指摘されています。

特に赤字のユニコーン企業を見る目は、明らかに変化しているとされます。

ウーバーやペロトンの株価の推移や、ウィーワークの市場評価額の暴落には、この変化がよく現れていますね。成長ストーリーに安易に飛びつく投資家が減っているのです。

ソフトバンクグループの孫正義社長は、次のニュースのとおり、スタートアップ起業家に対して黒字化を訴えています。きっと、孫社長はアメリカの投資家の意識の変化を感じとったのでしょう。

参考 ソフトバンクG孫氏、黒字化と企業統治訴え-起業家に新たなメッセージブルームバーグ

ソフトバンクに対する逆風

ビジョンファンドを主導するソフトバンクは、ファンダメンタルを度外視して、成長ストーリーでユニコーン企業を買ってきました。昨年までであれば、それで良かったでしょう。

今年に入ってからの投資家の意識の変化は、ソフトバンクに不利に働きそうです。

投資したタイミングや、ウーバーやウィーワークの評価額の設定から考えると、ビジョンファンドの投資先の多くが高値掴みになったことでしょう。今後、その高値掴みを正当化するためには、まずは黒字化し、継続的に企業価値を向上させるしかありません。

ウィーワークにはスプリント前CEOのマルセロ・クラウレ氏を送り込み、経営の立て直しを図ることになりました。これは各企業の自主性を重んじるビジョンファンドの群戦略に反するものです。

投資戦略に綻びが見えるソフトバンクグループですが、今後どのように立て直していくのか、引き続き注視します。

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