Long-term investment

持ち家と賃貸の経済合理性。インフレ率から考えてみる。

居住用の不動産は、持ち家と賃貸のどちらが有利か、という話題はよく見かけます。私が考えている点は、あまり指摘されていないのかな、と思ったので、とりあげてみました。

まずは、よく挙げられているのを見るメリット・デメリットを確認し、次に個人的な視点を書いてみます。

持ち家派の論点

持ち家のメリット

  • 資産として残る。
  • ローンを払い終えれば、老後の住居費負担が軽くなる。
  • 低金利な上に不動産ローン控除などがあるため、今は持ち家が有利。

資産として残るのはそのとおりですが、どれぐらいの価値が残るか?が重要です。35年ローンの場合、35年後の不動産の価値は、統計的に約60%減少します。

低金利だと有利な気がしますが、低金利だと特にマンションの価格は上昇し、金利が上がると価格が下がる点に注意が必要です。

賃貸のデメリット

  • 払い続けても資産として残らない。
  • 更新料が必要になる場合がある。
  • 老後に賃貸契約が難しい場合がある。
  • 賃料はそもそも割高である。

同レベルの物件で比較する場合は、持ち家派の方が有利です。

老後の賃貸契約は今後容易になるでしょう。あまり入りたくはないですが、老人ホームも改善されるかもしれません。

賃貸派の論点

賃貸のメリット

  • 人生のステージに応じた住み替えがしやすい。
  • 不動産ローン(負債)を背負う必要がない。
  • 今後の経済状況や気候変動が不透明なため、持ち家はリスクが高い。

今後の経済状況は極めて不透明です。AIの進歩を中心にした第4次産業革命では、AIで全ての産業が再定義されると言われています。これが本当なら、35年間安泰と言える職業は、ほとんど無い気がします。

持ち家のデメリット

  • 人生のステージに応じた住み替えが難しい。
  • 不動産ローン(負債)を背負う。
  • メンテナンス費用や固定資産税がかかってしまう。

不動産ローンを背負うと、一般的な家庭では15〜20年間、家計が債務超過になります。

不動産の長期保有についての私の考え

個人的なポイント

上に挙げたポイントは(他にも色々あるでしょうが)、それぞれもっともです。甲乙付け難いので、平行線になりますね。

個人的に重要視しているのは、不動産という資産を長期保有する経済的な合理性です。不動産の価格がどう推移するのか。この点を最も重視します。その他の点は、多少の我慢でなんとかなると考えているからです。

長期的な不動産の価値の推移

ピーター・リンチは、名著「株で勝つ」(One up on Wall Street)の冒頭で、「あなたがまだ家を所有していないなら、株式投資をする前に、まず家を買うべきだ」と書いています。

それはどうしてでしょうか?

答えはシンプルです。アメリカが長期的に人口増社会であり、2%前後のインフレ率を維持しているからです。不動産は実物資産であるため、インフレによって価格は上昇します。

不動産という資産クラスの、長期的な価値の推移を考える時に、特に重要になるのは、インフレ率と人口動態になります。

不動産とインフレ率

仮に土地部分が2,000万円、建物部分が2,000万円、計4,000万円の物件を購入するとします。35年後、この物件の価値はどうなっているでしょう。

建物部分は、木造であればゼロですね。木造の一戸建て住宅は、税法上は22年という耐用年数で減価償却されます。

問題は土地の部分です。2%年間複利で計算すると、35年後に19,998,668円も価格が上昇します。約2千万円です。建物の価値がゼロになっても、土地の価値がインフレ率だけで倍になるため、購入時の価格で売却することが可能です。

さらに、アメリカはインフレ率が高いだけでなく、人口増社会でもあります。アメリカの人口は現在約3.2億人ですが、2050年に3.8億人、2100年には4.4億人まで増加するとみられます(国連『World Population Prospects』)。

付け加えると、アメリカは経済成長率も高いです。過去40年の平均GDP成長率は2.63%ですが、今後も2%程度の成長を維持する見込みです(HSBC「2050年の世界経済」)。特に沿岸部の不動産需要は高まるでしょう。

一方で、インフレによって賃料は上昇していきます。アメリカのような高インフレ・人口増の国では、持ち家派が有利なことが分かります。

日本のインフレ率

日本のインフレ率は異常に低く、過去20年間の平均インフレ率は0.131%です。インフレによる不動産の価格上昇は、ほとんど期待できません。

その上、日本は人口減少社会です。人口減少によって、土地の価格は横ばいではなく、むしろ下がる可能性が高いと見るのが自然です。

長期保有すればするほど、土地の価格の下落圧力が高まるとしたら、経済的な合理性だけを考えると、日本では不動産を買う(不動産に投資する)メリットは小さいと言えますね。

資金の流れ

持ち家と賃貸にかかるもの

持ち家のローンと賃貸の賃料は、仮に毎月同じ金額を支払う場合、持ち家の方が良い条件の家を選べます。賃貸物件の賃料には、不動産投資家の利益が乗っていますからね。ローンより割高です。

同条件の物件であれば、毎月のキャッシュ・フローは持ち家派の方が有利になります。

賃貸の場合、同程度の支払いに抑えるためには、住む家のグレード(駅からの距離など)を落とす必要があるでしょう。

注意したい点として、持ち家には固定資産税管理費修繕積立金が不動産ローン以外に発生します。賃貸にはかかりません。賃貸には更新料が発生しますが、ない場合もあります(JKKやURのような公営住宅など)。

頭金と繰り上げ返済

不動産を購入する際には、フルローンで組まない限り、頭金を入れますね。まとまった資金が必要です。ローンの繰上げ返済をする場合にも、余裕資金を投入することになります。

一方で、賃貸派の人は、まとまった資金を投入する必要はありません。

仮に、持ち家派の人は頭金に入れるため、500万円の資金を投入するとします。そして、賃貸派の人は、米国株式のインデックスファンドを500万円分購入するとします。

35年後にどうなるでしょう?

ダウ平均の過去30年間のリターンは、年率6.3%。より長期で計算しても、年ごとの振れ幅は大きいが、平均すると6%強のリターンです。

6%の年間複利で計算すると、500万円のインデックスファンドは、35年後に3,824万円(税引後3,343万円)になります。控えめに4%の年間複利で計算してみると、1,996万円(税引後1,473万円)です。賃貸派の人が投じた500万円は、不動産を購入できるほどの資産に膨らみました。

一方で、持ち家派の物件価値は、どうなっているでしょうか。これまでのデータでは、35年間のマンションの価格下落率は約60%(三大都市圏)です。4,000万円で購入した物件は1,600万円ぐらいになりそうですね。今後は人口減少社会なので、下落幅はもっと大きくなるかもしれません。

35年後に残った資産は、賃貸派の方が遥かに大きい結果になりました。

結論

経済的な合理性の観点だけで考えると、日本では不動産を購入しない方が良いと分かります。

住んでいる場所が、アメリカやオーストラリアのような、人口増社会でインフレ率も高い国であれば、購入するメリットは大きくなります。

例外は、財政不安からインフレ率が急上昇したり、ハイパーインフレが起きる場合です。そういう事態になったら、不動産の価格だけでなく、賃料も大幅に上がるでしょうから、持ち家派がかなり有利になります。

実際にインフレ率が急上昇した場合の話については、次の記事にまとめました。ご参照ください。

ハイパーインフレになるから自宅を買うべきという理屈

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