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ビジョンファンド2の概要
ソフトンバンクグループが主導するビジョンファンド2については、1,080億ドル規模となることが7月に発表されています。みずほ銀行、三井住友銀行、Apple社、Microsoft社などの出資が見込まれていることも、併せて報道されました。(出資企業の詳細は以下のリンクを参照)
参考 ソフトバンクが約12兆円でAIフォーカスの第2ビジョンファンドを立ち上げTechCrunchビジョンファンド2の投資先がどこになるかは不明でしたが、世界のAI(人工知能)関連企業に投資するという、ビジョンファンドの基本理念は揺るがないと思われていました。
ビジョンファンド2の投資先を巡る報道
ビジョンファンド2の投資先について、10月26日、次のように報じられました。
参考 バーガーロボットや培養肉がビジョンファンド2号の投資先候補かブルームバーグブレるビジョンファンドの理念
・・・培養肉?さすがに目を疑いました。「AI関連企業に投資する」というファンドの理念はどうなったのかと。
ビジョンファンドの理念は大きく崩れ始めているようです。今話題になっているウィーワーク社の事例は分かりやすいです。
- ウィーワーク社は不動産テックと称するが、実際には不動産賃貸業である。「世界のAI(人工知能)関連企業に投資する」というビジョンファンドの理念から逸脱している。
- ウィーワーク社に追加出資することにより、ビジョンファンドとソフトンバンク・グループの持分を合わせると、約80%の保有となる。経営陣も送り込む。「各社の株式の20〜30%を保有し、経営の自主性を重んじる」という、ビジョンファンドの理念から逸脱している。
ビジョンファンド2の投資先候補と報じられた培養肉とは?
培養肉とは、昆虫や牛の肉の細胞を培養によって増殖して得られる肉、というものです。
これまで私は何度か、代用肉について書いてきました。ビヨンド・ミート社や、ケロッグ傘下モーニング・スター・ファームス社の、ベジミート(植物肉)についてです。ケロッグには投資もしています。
最初は同じようなものかと思いました。しかし調べてみると、ベジミートと培養肉は根本的に異なります。ベジミートは肉によく似た味ですが、主な材料は大豆です。文字どおりの代用肉ですね。一方の培養肉は肉そのものです。
ベジミートと培養肉には次の違いがあります。
製造方法 | 動物の屠殺 | タンパク質 | 製造コスト | |
培養肉 | 細胞の培養 | 必要なし | 動物性 | 非常に高い |
ベジミート | 大豆などの加工 | 必要なし | 植物性 | やや高い |
培養肉は宇宙環境など、屠殺が難しい環境でも肉を得られるということで、NASAやJAXAでも研究開発が進んでいるようです。
培養肉事業のメンフィス・ミーツ社とAIの関連性は?
「世界のAI(人工知能)関連企業に投資する」というビジョンファンドですから、培養肉を製造するメンフィス・ミーツ社もAI関連企業であるはずです。しかし、メンフィス・ミーツ社のビジネスモデルや、公表している内容に、AI要素は全く見当たりません。メンフィス・ミーツ社のホームページを見ても、AIという単語は全く使われていないのです。
ビジョンファンドの2号ファンドは、「世界のAI(人工知能)関連企業に投資する」という基本理念を度外視して、投資先を選定するのでしょうか。少なくとも1号ファンドでは、ウィーワーク問題が起こるまでは、AI投資という建前が生きていました。
メンフィス・ミーツ社は期待できるか?
「AI関連企業」とは言えませんが、メンフィスミーツ社を調べると、同社の事業内容は、名ばかりのAI関連企業より期待できそうです。「AI関連企業に投資する」という理念からかけ離れた企業に投資することで、かえって良い投資成績になるかもしれません。
メンフィス・ミーツ社については、次のリンクを参照してください。日経の記事は最近のものです。ForbesとMIT Technology Reviewの記事は少し古いですが、同社の事業内容を導入的に理解するのには参考になるかと思います。
参考 広がる「脱ミート革命」 ファッション・医薬業界にも日経 参考 ゲイツとブランソンが出資、「クリーンな肉」の将来性Forbes 参考 「指まで舐めちゃうおいしさ」の培養鶏肉は2021年に一般販売MIT Technology Review