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グラクソ・スミスクラインとは
グラクソ・スミスクライン(以下、GSKと書きます。)は、イギリスのロンドンを根拠地とする、イギリス最大・世界第5位の製薬メーカーです。メガ・ファーマ(巨大製薬会社)の一つ。
本拠地 | ロンドン |
創業 | 1999年 ※ |
セクター | ヘルスケア |
ティッカー | GSK |
※ 源流のプラウ・コート・ファーマシーは1715年創業。
グラクソ・スミスクラインの業績推移
売上高の推移
ソースはアニュアル・レポートです。売上高は右肩上がりで推移しました。
営業利益の推移
2015年に利益が大きいのは、ノバルティスとの事業交換が行われたため。ワクチン事業を取得し、オンコロジー(がん領域)事業を売却しています。2016年はチャイナショックの余波やブレグジット問題の影響を受けました。
グラクソ・スミスクラインのキャッシュ・フロー
キャッシュフロー
単位:百万ポンド
営業CF | 投資CF | 財務CF | |
2015年 | 2,569 | 6,037 | △7,103 |
2016年 | 6,497 | △1,269 | △6,392 |
2017年 | 6,918 | △1,443 | △6,380 |
2018年 | 8,421 | △1,553 | △6,389 |
2019年 | 8,020 | △5,354 | △1,840 |
営業キャッシュフローは安定的に推移しています。
投資CFが増加傾向です。2018年にノバルティスとの大衆薬合弁事業のノバルティス持分の買収(約130億ドル)、2019年に米ファイザーと大衆薬事業を統合、GSKコンシューマー・ヘルスケアのを設立で合意(合弁会社の出資比率は、GSKが68%、ファイザーが32%)。
フリーキャッシュフローの推移
フリーキャッシュフローはプラスを維持しています。
グラクソ・スミスクラインの配当推移
数値はポンド・ベースです。直近5年間は据え置かれています。
イギリスは配当課税がゼロ。GSKはADR手数料も一株当たり0.005ドルと、無視できる程度です。NISA枠で購入する場合は、現地も日本も非課税となります。
主な事業
GSKは主力セグメントを、医療用医薬品(以下、医薬品) 、ワクチン、コンシューマー・ヘルスケア(以下、ヘルスケア)の3つに分けています。医薬品とヘルスケアの違いは、医薬品が医療関係者が使用したり処方する薬品、ヘルスケアは大衆向けの薬品です。
主力三事業の売上高推移
単位 百万ユーロ | 医薬品 | ワクチン | ヘルスケア |
2016年 | 16,104 | 4,592 | 7,193 |
2017年 | 17,276 | 5,160 | 7,750 |
2018年 | 17,269 | 5,894 | 7,658 |
2019年 | 17,554 | 7,157 | 8,995 |
医薬品
呼吸器疾患とHIVの医薬品では、業界をリードする地位にあります。気管支喘息や、COPD用の薬(サルメテロール・フルチカゾン)は、世界120か国で使用され、ブロックバスターです(日本ではアドエア)。HIV製剤も塩野義製薬と共同開発したテビケイ、トリーメクが売上高を続伸させています(GSKが約78%の権利)。
2018年からはドイツのメルク社と、がん免疫薬(bintrafusp alfa(GSK4045154))を共同開発しています。GSKは最大4,600億円を出資。メルクがアメリカ国内、GSKがアメリカ以外の国での販売の権利を得ます。がん免疫薬は3年後には、3兆円市場に伸びるとされます。
ワクチン
ワクチン事業の売上高は、2019年に対前年比で約21%の伸びです。現在最も伸びている事業です。世界160か国で展開しています。長期的には世界の人口増加も追い風になるかもしれません。
髄膜炎とインフルエンザのワクチンが主力。インフルエンザに関しては、製薬分野で世界をリードしています。抗インフルエンザ薬のリレンザは、日本でも有名です。
ヘルスケア

アクアフレッシュ source GSK HP
2019年に対前年比で約17%の伸びです。コンタック、ニコチネル(禁煙補助剤)、シュミテクト、アクアフレッシュ、ポリデント、ポリグリップなど、全国のドラッグストアで見かけるお馴染みの商品を販売しています。
グラクソ・スミスクラインの新型コロナウィルス・ワクチン開発
GSKは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発に、巨額の投資をしています。ソフトバンク・グループが出資する、VIRバイオテクノロジー社に対しては、2億5,000万ドル出資し、ワクチン開発で提携すると発表されています。
COVID-19のワクチン開発には、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど有力な企業が取り組んでいます。GSKの投資が成果を生むかは未知数ですが、期待したいところですね。
参考 グラクソ、米感染症薬開発企業に2.5億ドル出資 新型コロナで提携ロイター 参考 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への取り組みGSK・HP評価
世界的な評価
GSKは様々な方面から高い評価を受けています。
- フォーチュン誌の「世界を変える企業ランキング」で1位(2016年。抗HIV薬等が高評価。)
- 世界経済フォーラム(ダボス会議)の「世界で最も持続可能性のある企業100社」で5位(2019年)
- 日経のニューオフィス推進賞(2018年)
アフリカの一部の国では特許を使用せず、現地の医薬品メーカーを育て、ジェネリック医薬品からライセンス料を取るビジネスモデルを展開。製品を売る場合にも、先進国で販売する場合の、25%未満の金額にしています。この事業も高い評価を得ています。
個人的な評価
GSKの特徴として、他のメガファーマに比較して、ワクチンやヘルスケア(大衆薬品)に力を入れてきた印象があります。ヘルスケアが、GSKコンシューマー・ヘルスケアに移管された後、どう変化するかに注目したいところ。
流動比率が100%未満で推移するなど、財務に不安がありますが、ヘルスケア銘柄の中では割安に買えます。配当課税がゼロであることも、高配当銘柄としては魅力が大きいですね。