Long-term investment

ベンジャミン・グレアムの7つの基準とバリュー株投資の考え方

ベンジャミン・グレアムとは

ベンジャミン・グレアム(1894〜1976)は一般に「バリュー株投資の父」として、知られています。ウォーレン・バフェットの師匠としても有名ですね。

グレアムの株式投資の理論は、死後半世紀以上経って、むしろ説得力を増しています。個人投資家が陥りがちな失敗について、『賢明なる投資家』(The Intelligent Investor)は網羅的に解説していますし、プロ向けに書かれた『証券分析』( Security Analysis)の理論は現在でも活用できます。

グレアムが防衛的投資家に勧める7つの基準

グレアムが著作の中で多用する「防衛的投資家」(Defensive Investor)は、現在のバリュー株投資家の意味合いに近いものです。グレアムは、防衛的投資家は以下の7つの基準を守って投資をするべき、と言います。

①適切な企業規模

グレアムは、製造業なら年間売上が10億ドル以上、それ以外の業種(公益企業等)は総資産5,000万ドル以上の会社に絞って投資をするべき,とします。小型株は避けるべき、ということですね。

小型株のベータ値(株価変動率)は、一般的に大型株よりも大きいことで知られます。現在は、Russell 2000 Index等の小型株指数に投資をすることで、比較的安全に小型株投資を行えますが、グレアムの時代にはインデックス・ファンドはまだありません。

②健全な財務状況

財務が良い企業に投資をすべきなのは当然ですが、グレアムの基準は「流動資産が流動負債の2倍以上」である企業です。

③収益の安定性

過去10年間の収益が安定的であること。

④配当歴

過去20年間、無配当の年がないこと。

グレアムが投資家として活動し始めた初期には、満足な投資情報が得られませんでした。その時に企業が問題なく運営されている証拠となったのは、「配当を出していること」です。配当を出している限り、その企業はしっかりやっていると評価されたわけです。現在は情報量が多く、様々な分析が可能ですが、配当を出していることは、依然として重要な意味を持ちます。

⑤収益の伸び

過去10年間の最初の3年間と最後の3年間の平均収益を比較して、最低33%伸びていること。

この基準はかなり控えめだと感じますね。成長性より安定性を、重要視すべきということでしょうか。

⑥妥当な株価収益率(PER)

現在の株価が、過去3年間の平均収益の15倍を超えないこと。

一年だけのEPS(一株あたり利益)で計算すると、特別に良かった年の利益によって、PERが割安に見えることがあります。そして、その企業の収益が本来のレベルに落ち着いた時に、PERで割安と判断していた株価が、実は割高だったと気づくのです。

過去3年間の平均で見るなら、このような間違った値付けは起きにくいでしょう。予想EPSに基づくPERは論外です。「現在の株価」という実際的な数字を、予測に過ぎない収益で割っているからです。これではただの先物PER。使い物になりません。

⑦妥当な株価純資産倍率(PBR)

現在の株価が簿価の1.5倍以下であり(PBRが1.5倍以下)、PERとPBRを掛けた数値が22.5未満であること。

難しいように見えますが、PBRが何倍であるかはすぐに調べられます。PERとPBRを掛け算するのも簡単ですね。注意点は、ここで言うPERは過去3年のEPSの平均値を、現在の株価で割ったものであることです。

投資に未来予測はあまり必要ない

未来予測に重きを置く投資家

予測に重点を置く投資家は、ある企業が今後、何か素晴らしいことを達成したり、好業績を継続することを予測します。そのための分析は、過去の業績の延長線上に未来を置くものや、近未来の社会を予測するものまで様々です。

未来予測が良い場合、株価が多少割高でも買いのスタンスを取ることも、特徴です。この方法の問題点は、予測できると考えている未来は、実際には不確実であることです。一年先のリスクさえ、我々には予測不能です。

バリュー投資家は防衛を重視する

グレアムの7つの基準を満たす割安な企業は、そこそこのパフォーマンスを継続するだけでも、十分なリターンをもたらします。また、割安であることは、市場のショック時には暴落へのクッションにもなります。

私たちが投資をする時、その企業の未来を予測する能力(質的分析)は必要ありません。基準を満たしている企業を見つけて(量的分析)、分散投資をすれば良いと、グレアムは指摘しています。

グレアムに学んだバフェットのバークシャー・ハサウェイの記事はこちらです。

バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の銘柄分析。不況に強い資産株。

2 COMMENTS

アバター ney

ブログいつも楽しみに読ませていただいています。

ところで、最近読んだ『ビッグミステイク レジェンド投資家の大失敗に学ぶ』という本に、グレアムについて以下のような記述がありました。

「1930年、最悪の時期が終わったと考えたグレアムは、資金全額を投じて一気に勝負に出た。とてつもないリターンを期待して信用買いに走ったのだ。ところが、最悪の期間はまだ終わっていなかった。ダウ平均は総崩れし、資産の50パーセントを失うというかつてない大敗北を喫した。…1929年から1932年に底値をつけるまでの4年間で、グレアムは資産の70パーセントを失った。これほど注意深く思慮深いアナリストでさえ資金の大半を失うことがある。 」

『証券分析』の初版が1934年刊であることを考えると興味深いです。

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itaken itaken

>neyさん
ありがとうございます。あちらでも、お世話になっています。
面白そうな本ですね。グレアムが信用買いで2億の大損とは、イメージに合わないところですが、「賢明なる投資家」を読んでいると、グレアムは市場が「高値圏」にある時には株の売却もするようですね。マーケット・タイミング戦略を批判してはいますが、さすがに1929年の大暴落後はチャンスと思ったんでしょうか。その時に買おうと思えたのもすごいですが。悲観が支配したであろう時期に、戻すと思ったわけですからね。

この失敗が「証券分析」の糧になったんでしょうか。グレアムほどの賢人でも、マーケット・タイミングや信用取引をすると、大失敗するというのは、面白いエピソードです。

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