目次
JTの2020年第1四半期決算の概要
売上高
単位:億円 | 19年1Q | 20年1Q | 増減率 |
国内たばこ事業 | 1,447 | 1,351 | △6.6% |
海外たばこ事業 | 3,004 | 3,262 | 8.6% |
医薬事業 | 228 | 207 | △9.0% |
加工食品事業 | 360 | 367 | 2.1% |
その他 | 16 | 9 | △46.1% |
計 | 5,054 | 5,196 | 2.8% |
営業利益
単位:億円 | 19年1Q | 20年1Q | 増減率 |
国内たばこ事業 | 470 | 392 | △16.6% |
海外たばこ事業 | 755 | 897 | 18.8% |
医薬事業 | 650 | 66 | △89.9% |
加工食品事業 | 1 | 4 | 239.0% |
その他 | △50 | △69 | △38.0% |
計 | 1,826 | 1,290 | △29.4% |
概要
売上高・営業利益ともに、国内たばこ事業の減少傾向と、海外たばこ事業の増加傾向が続いています。国内たばこ事業ではRRP製品のシェア拡大が課題ですが、仮に軌道にのっても、この傾向は続くでしょう。「健康増進法の一部を改正する法律」が2020年4月1日に施行されたことも、国内たばこ事業には痛手になります。
国内たばこ事業と海外たばこ事業が利益を相殺している中で、医薬事業の営業利益の大幅な減少が目につきます。医薬事業の営業利益の減少理由や今後の見通しについて、以下、まとめてみました。
医薬事業・営業利益の減要因
ロイヤリティ収入の減少要因
医薬事業の営業利益が89.9%減となっています。減少主因として「海外ロイヤリティ収入の減少」とだけ、今回の決算レポートに記載されています。
このロイヤリティが何を指すかと言うと、ギリアド・サイエンシズ社が販売する抗HIV薬の「ゲンボイヤ」及び「スタリビルド」に含まれるJTの化合物、「エルビテグラビル」のロイヤリティ収入です。エルビテグラビルはJTが創成した化合物です。ギリアド社が製造するゲンボイヤなどの抗HIV薬に含まれています。
国内における抗HIV薬の販売ライセンス契約解消
JT・子会社の鳥居薬品は、米ギリアド・サイエンシズ社からのライセンスに基づいて、抗HIV薬6製品の国内販売ライセンスの独占権を持っていました。JTとギリアド社は2018年11月29日に、このライセンス契約を解消することで合意しています。
その結果、ギリアド社からは、日本国内の販売ライセンス契約解消に伴う対価として、605億がJTに支払われました。その後は、ギリアド社の日本法人が、これら医薬品の販売ライセンスを持っています。
2019年1Qの営業利益には、この605億が含まれていたため、2019年1Qと2020年1Qの営業利益を比較した時に、2020年1Qの営業利益は大幅な減少になりました。
アトピー性皮膚炎治療薬デルゴシチニブ(コレクチム軟膏0.5%)
JTの子会社である鳥居薬品(出資率53.46%)は、2020年1月23日に承認されたデルゴシチニブを、6月24日から販売開始します。商品名はコレクチム軟膏0.5%です。コレクチム軟膏0.5%は、免疫の過剰な活性化を抑制してアトピー性皮膚炎を改善する、世界初の非ステロイド系JAK阻害薬です。
2020年度中のコレクチム軟膏0.5%の売上高については、鳥居薬品の売上高として10.7億が見込まれています。今後、長期的に利益への寄与が期待できる医薬品が、承認され販売されることは、JTにとっては朗報ですね。
参考 アトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム®軟膏 0.5%」薬価収載及び新発売のお知らせJT