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バフェットの「株主への手紙」とは
バークシャー・ハサウェイが、先週末の土曜日(2月22日)に、2019年版のアニュアル・レポート(年次報告書)を発表しました。バークシャーのアニュアル・レポートの特徴になっているのが、バフェットの「株主への手紙」です。
ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーが株主に向けて書いたもので、約10ページの内容になっています。この記事では印象に残った部分を紹介します。
営業利益と純利益
純利益が急増
純利益が昨年から約40倍になっています。これは何故かと言うと、米国会計基準(US GAAP)の変更によって、株式投資の含み損益を純損益段階で認識することになったのです。市況の変動によって、純利益は激しく上下するようになりました。
バフェットは次のように、増加した純利益よりも事業収益(営業利益)を見るべきと言います。ブル相場なら上昇し、ベア相場なら減少する純利益よりも、営業利益の方がバークシャー・ハサウェイの本質的な実力を現すということでしょう。
営業利益を見るべき
Charlie and I urge you to focus on operating earnings – which were little changed in 2019 – and to ignore both quarterly and annual gains or losses from investments, whether these are realized or unrealized.
(訳)チャーリーと私は2019年にほとんど変化がなかった、営業利益に着目することを推奨します。そして、実現利益・未実現利益を問わず、投資による四半期及び年次の損益を無視することを推奨します。
バークシャー・ハサウェイとフロート
保険事業
One reason we were attracted to the P/C business was the industry’s business model: P/C insurers receive premiums upfront and pay claims later.This collect-now, pay-later model leaves P/C companies holding large sums – money we call “float” – that will eventually go to others. Meanwhile, insurers get to invest this float for their own benefit.
(訳)私たちが 損害保険事業に惹かれた理由は、そのビジネスモデルにあります。損害保険会社は保険料を先に受け取り、保険金を後で支払うのです。このビジネスモデルによって、損害保険会社は多額の資金(フロート)を手にしました。いずれ、他者に保険料として支払われる資金ですが、損害保険会社はその間、自分の利益のために、この資金を投資する機会を得たのです。
フロートとは
バークシャー・ハサウェイを象徴する手法が、傘下保険会社(ガイコなど)のフロートの活用です。フロートとは、損害保険会社に支払われた保険料のうち、支払い準備資金以外の資金です。この浮いた資金をバフェットは投資事業に活用してきました。バークシャーのフロートは次のように、拡大してきました。
年 | フロート(百万ドル) |
1970 | 39 |
1980 | 237 |
1990 | 1,632 |
2000 | 27,871 |
2010 | 65,832 |
2019 | 129,423 |
ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの後
バフェットとマンガーの高齢化問題
現在、ウォーレン・バフェットの年齢は89才、チャーリー・マンガーの年齢は96才です。この二人の稀代の投資家に支えられてきたバークシャーにとって、最も悩ましいのが高齢化問題です。
このことについて、バフェットは今回の「株主への手紙」に次のように書きました。
バフェットの言葉
Charlie and I long ago entered the urgent zone. That’s not exactly great news for us. But Berkshire shareholders need not worry: Your company is 100% prepared for our departure.
(訳)チャーリーと私は しばらく前に緊急地帯に入りました。それは我々にとって良いニュースではありません。しかしバークシャーの株主は心配する必要はありません。あなたの会社は、我々の出発に対して100%の準備が出来ています。
バークシャー・ハサウェイの保有株式
バフェットは保有株式の評価額の上下に一喜一憂せず、事業収益を見ることを推奨しています。振れ幅の大きい株式の損益よりも、100%子会社にしている、電力会社や鉄道会社の収益が重要だと言います。
しかし、保有株式の評価額についても、アニュアル・レポートの中で、次のように分かりやすく公表しています。単位は百万ドルです。
バークシャーの保有株式一覧(単位 百万ドル)
銘柄 | 保有割合※ | 投資額 | 市場価値 |
アメリカン・エクスプレス | 18.7 | 1,287 | 18,874 |
アップル | 5.7 | 35,287 | 73,667 |
バンク・オブ・アメリカ | 10.7 | 12,560 | 33,380 |
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | 9.0 | 3,696 | 4,101 |
チャーター・コミュニケーションズ | 2.6 | 944 | 2,632 |
コカコーラ | 9.3 | 1,299 | 22,140 |
デルタ航空 | 11.0 | 3,125 | 4,147 |
ゴールドマン・サックス | 3.5 | 890 | 2,859 |
JPモルガン・チェース | 1.9 | 6,556 | 8,372 |
ムーディーズ | 13.1 | 248 | 5,857 |
サウスウエスト航空 | 9.0 | 1,940 | 2,520 |
ユナイテッド航空 | 8.7 | 1,195 | 1,933 |
U.S.バンコープ | 9.7 | 5,709 | 8,864 |
ビザ | 0.6 | 349 | 1,924 |
ウェルズ・ファーゴ | 8.4 | 7,040 | 18,598 |
その他 | – | 28,215 | 38,159 |
計 | – | 110,340 | 248,027 |
※ 保有割合はその会社の発行済株式数に対して、バークシャーが保有している割合です。