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ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)とは
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下、本文中では略称のBATとします。)は、ロンドンに本拠地を置く、売上高世界第2位のタバコメーカーです。
ロンドン証券取引所だけでなく、ニューヨーク証券取引所(ADR)にも上場しているため、日本からもADR銘柄として売買が可能です。
本拠地 | ロンドン |
創業 | 1902年 |
セクター | 一般消費財 |
ティッカー | BTI |
略称 | BAT |
ブリティッシュ・アメリカン・タバコの業績
売上高の推移
経常利益の推移
黒字で推移しています。2017年は、同年に買収した米レイノルズ・アメリカン社(RAI)の電子タバコ事業が寄与し、大幅増益となりました。2017年の純利益はアップル社に次ぐ、世界第2位でした。
2018年には、レイノルズ・アメリカン社買収に関連した一時的な利益に対する課税や、米国の税改正の影響を受け、会計上は減益となっています。(希薄化後EPSは86%減少)。しかし、税制の影響を除外すると、売上高は25%増、営業利益は45%増となっており、むしろ好調なのがわかります。
2019年には更に売上高が6%増。紙巻きタバコの売上高が減少する一方で、ベイパー製品の売上高は2018年に26%増、2019年に19%増となっています。(数値のソースはアニュアル・レポートです。)
ブリティッシュ・アメリカン・タバコの財務
流動比率
単位:百万GBP | 流動資産 | 流動負債 | 流動比率 |
2016年 | 12,359 | 11,856 | 104.2% |
2017年 | 13,966 | 15,605 | 89.5% |
2018年 | 12,655 | 16,329 | 77.5% |
2019年 | 13,274 | 18,823 | 70.5% |
有利子負債の推移
大型買収によって、有利子負債が倍以上に膨らみましたが、利益剰余金(内部留保)も大幅に増えています。流動比率は心配になる水準ですが、当面の財務にそれほど不安はありません。
利益剰余金の推移
ブリティッシュ・アメリカン・タバコのキャッシュ・フロー
営業キャッシュフローの推移
レイノルズ・アメリカン社買収効果はここに現れています。アメリカでの売上増や、電子タバコ事業の強化によって、営業キャッシュフローは倍増しました。
フリーキャッシュフローの推移
RAIを買収した2017年は、投資CFの大幅増によって、フリーCFもマイナスになりました。しかし、2018年・2019年に営業CFが大幅に上昇し、フリーキャッシュフローも増加したことを見ると、悪くない買収だったと言えそうです。
ブリティッシュ・アメリカン・タバコの製品ポートフォリオ
紙巻きタバコ
- ケント(現行18種。主力銘柄)
- ラッキーストライク
- ポールモール
- キャメル
- ニューポート(米国のメンソール・ブランド)
- ダンヒル
- ナチュラル・アメリカン・スピリット(米国限定。米国外の権利はJT)
PRRP(Potentially Reduced-Risk Products)
BATのPRRPは、JTのRRP(リスク低減製品)に当たります。Potentiallyが加えられているのは、リスク低減商品とは現時点で言い切れない、ということでしょう。健康リスク低減の可能性を秘めた商品、ということになりますね。
加熱式たばこ製品は、フィリップ・モリスのiQOSに次ぐ人気を持つglo(グロー)が主力です。今後主流になるであろうベイパー商品としては、イギリスで人気のVype(ヴァイプ)などがあります。現在、BATはPRRPの強化に取り組んでいますが、紙たばこの販売を即時中止する予定はありません。

BATのPRRP製品ポートフォリオ
ブリティッシュ・アメリカン・タバコの評価
長期下落トレンド
ピーク時(2017年頃)には70ドル以上あった株価が、現在は30ドル台で推移。約半分になっています。このため配当利回りも上昇し、7%前後で推移。
BATの株価下落の最大の要因は、食品医薬品局(FDA)が、全米でメンソールたばこの販売禁止の方針を表明したことです。メンソールはアメリカのたばこ市場で3分の1程度のシェアがあり、若者に人気とのこと。この規制によってニューポートという、有力なメンソールたばこブランドを持つBATに悲観的な見方が広がりました。
もっとも、ベースにあるのはたばこ事業自体への懸念でしょう。先進国で衰退していくのは目に見えています。BATはPRRP事業の強化によって、時代の逆風に対応しようとしています。
今後の見通し
先進国でたばこ事業が衰退する一方で、新興国では可処分所得の増加によって、今後、喫煙者人口の増加が見込まれています。特にアフリカは注目されていて、日本のJTもエチオピアに進出するなど、シェアの獲得競争が起きています。アフリカの多くの国にとって、旧宗主国のイギリスは親しみがあるようで、BATには優位性があるかもしれません。
コロナショックでは、一時的に激しく下落しましたが、回復は早かったです。たばこ銘柄の安定性が感じられる相場でした。不安定な時期には適した銘柄の一つと言えそうです。